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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

この老獪なる建設団長――いや、七日前に本国からの電信により、あらたに極東艦隊飛行島戦隊司令官に任命されたリット少将は、なぜそんなに機嫌がよいのであろう?

実は、これには深い仔細があったのである。リット司令官の胸中には、戦隊の首脳部のほんの数名にしか知らせてないある策略が宿っていたのである。

では、その策略というのは?

大量の非戦闘員を出発させるというのに、わざわざ真夜中をえらんだのは、なぜか。

監禁囚人はもちろん、大事な俘虜杉田二等水兵や、カワカミの容疑者などを、同じ船にのりこませたのは、なぜか。

それ等の事柄を、いま飛行島の建設がおわったことと思いあわせて、読者はなにごとかを胸のうちに感じないであろうか。

なんとなく重苦しい予感!

いや、もっとはっきりいいあてていい。

もう一つ、考える材料ができた。それは飛行島を放れて香港へ行くはずの汽船ブルー・チャイナ号が、奇怪にも今それと反対に、真南に航行していることである。

リット少将が、にやにや笑っている。

それとは露知らず、さんざん酔払って乗船した帰還団体の誰も彼もは、船がどっちを向いて走っているのか、そんなことは知ろうとしないで、なおも酒壜をかかえて、わあわあ騒いでいた。