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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
やがて彼の眼の前を、長身の水兵が鼻唄まじりで、風のように通りすぎた。
(おお、気づかれずにすんだか。もちっとで鉢合せをして、呼笛でもふかれるところであった)
川上機関大尉は、ほっと胸をなでながら、積みかさねられたカンバスの山のかげから姿を現した。
すると今度は、反対に後方から、別のあらあらしい足音が聞えた。
(あっ、見つかってはたいへん!)
もうカンバスの山にかえる暇はなかったので、思いきって通路を向こうへ、つつーと栗鼠のように駈けぬけた。
(どこか、隠れるところはないか)
と、そこに見えた横道にとびこむと、これがなんと行きどまりの袋小路だった。
(しまった!)
と思ったが、もうおそい。
足音はいよいよ近づいた。息をのむ間もなく、飛べば二足ほどの向こうの角へ一人の下士官が姿を現した。
(見つかった)
下士官は、川上機関大尉のとびこんだ袋小路へ顔を向けた。そしてあっというなり、たじたじと後へさがったが、すばやく右手を肩にかけたサックに伸ばしたと思うと、とりだした一挺のピストル。
もうおしまいだった。
「えい!」
川上機関大尉の体が前かがみになったと思ったら、右手にさっと閃いた白刃!