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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
リット提督も、スミス中尉を戸口まで送ったが、彼の耳には、甲板の索具にあたって発するすさまじい嵐の声が、なんだか亡霊の呻声のように思われた。
中尉が水兵たちをひきいて立ち去ろうとした時、はるか後方の下甲板から、警笛がひゅーっとひびいた。そしてピストルの乱射の音につづいて、うわーっという鬨の声があがった。
「あ、あれは何だ」
リット提督は、きっとなった。
「さあ、どうしたのでしょうか」
スミス中尉も怪訝な面持であった。彼はまだ何の報告もうけていない。
その時、甲板を一散にこっちへ駈けてくる下士官があった。彼は、提督室から洩れる灯かげを片面にうけて立っているスミス中尉を認めるや、
「おおスミス中尉!」
と、息せききって声をかけた。
スミス中尉が、何かいおうとした時、かの下士官は、息をはずませて叫んだ。
「スミス中尉、飛行島内に、怪漢がまぎれこんでいて、下士官が二名やられました。すぐ下甲板へおいでを願います」
「なに、怪漢がまぎれこんだと。よし、すぐ行く。全隊、駈足!」
スミス中尉は、怪漢暴行中との知らせをうけ、さてこそ大事件発生だとばかり、下士官のいうことをよくも確めず、宙をとぶようにして駈けだしていった。