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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

長谷部大尉の眼には、涙一滴浮かんでいないが、胸の中は、はりさけんばかりであった。

前艦橋に艦長が出てこられた。

いよいよ出港だ。

嚠喨たる喇叭が艦上にひびきわたった。

桁には、するすると信号旗があがった。

「出港用意!」

伝令は号笛をふきながら、各甲板や艦内へふれている。

艦首へ急ぐもの、艦尾へ走るもの。やがて、飛行島へつないでいた太い舫索が解かれた。

機関は先ほどから廻っている。

そのうちに、飛行島の鉄桁が横にうごきだした。艦尾は白く泡立っている。小さい波が、後にひろがってゆく。

練習艦明石は、飛行島を離れたのだ!

一番艦の須磨はと見れば、もうかなり先へ進んでいる。

ららららら。ひゅーっ。

飛行島の上からは、さかんに帽子をふる、手をふる。白人も黒人も、顔の黄いろい東洋人も――。

ららららら。ひゅーっ。

飛行島の最上甲板には、飛行島建設団長のリット少将の見送る顔も見える。

桁には、また新たに信号旗がするするとあがった。

「出港に際し、リット少将に対し、深甚なる敬意を表す」

白髪紅顔のリット少将は、にっこりとしてまた挙手の礼を送った。

飛行島の信号鉄塔の上にも、安全なる航海を祈るという旗があがった。