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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
あとに残った中国人のペンキ工は、後にまわしていた片手をいそいで顔の前にもっていった。その手には一枚の紙片が握られていた。彼はその上にかかれた英文をいそいで読みくだした。
そして直ちにその紙片を、塔の入口に近く眼につきやすいところへ捨てた。そして自分は、その場へぶったおれて、血だらけの顔をおさえながら、苦しそうな息を肩でついた。
一旦塔の中に入った士官が、真青になってひきかえしてきた。彼は入口のところで、すばやく落ちている紙片を見つけた。
「ああ、よかった。ここに落ちていた」
士官は紙片をひろいあげると、うさん臭い眼つきで、ペンキ工の中国人の方を見た。中国人は、顔中血だらけにして、うんうんうなりながらそこにへたばっている。それを見ると、士官は安心して、紙片を握ったまま塔の中に引返していった。
広間にはリット少将が、お待ちかねであった。ハバノフ氏は、遠慮をもとめられたものか、そこにはもう姿がなかった。
「おお、スミス中尉。一体どうしたんだ」
「はっ、少将閣下」
と、スミス中尉とよばれた若い士官はその場に直立不動の姿勢をとって、
「――只今、本島の通信班から緊急報告がまいりました。