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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
川上機関大尉は、あたりに人気のないのを見すますと、ペンキの缶の底をひらいて、二条の針金をひっぱりだした。その針金の先についている小さい物挟を、舷の梁上に留めると、針金は短波を送るためのアンテナとなった。
そこで彼は、小さな受話器を耳にかけ、同じく缶の底にとりつけてある電鍵をこつこつ叩いて、軍艦明石の無電班を呼んだ。
相手は、待っていましたとばかりにすぐ出てきて、暗号化したモールス符号で応答してきた。
機関大尉は溜めておいた重大な報告を一つ一つ電鍵を握る指先にこめて打ちはじめた。
その時、頭の上で、ごそりと人の気配がした。
彼は、はっと驚いて上を見た。梁の上にピストルがきらきらと光って、その口がこっちを向いていた。
「はっはっはっ。日本のスパイ君。君はとうとう秘密のお仕事を始めからすっかり見せてくれたね。さあ手をあげるんだ。こら、なぜあげないのだ。あげないか。撃つぞ」
だだーん。
梁の上から、銃声がとどろいた。
ピストルの弾丸は、川上機関大尉の抱えていたペンキの缶にあたった。
缶は、あっという間もなく舷を越えて下にころげ落ちた。
とたんにひらりと身を飜して、逃げだした。