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うみからきたたまご
海からきた卵
塚原 健二郎
「赤い鳥 第二十一巻第五号」赤い鳥社、1928(昭和3)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,534 字 · 10 页
「ボウトを下ろせ、ボウトを下ろせ。」
船長は叫び立てました。かわいそうにミル爺さんは、せっかく日本から買って来た山雀も張子の虎も捨てて、みんなと一しょにボウトに乗りうつりましたが、それでもセルゲイとの約束の武者人形だけはしっかりかかえていたのです。
次の朝ミル爺さんは気がついてみると、海のまん中にある大きな岩の上に倒れていました。そばにいるのは日頃仲のいいコックのジムです。
「ミル爺さん、気がついたかね。」
「おやジムさん、ぜんたいどうしたんだねわしは。ボウトが恐ろしく高い波の上に放りあげられたのを知っているが、それからあとは夢のようだよ。」
ミル爺さんは、ほんとにまだ夢のつづきではないかと、穴のあくほどジムの顔をみつめました。
「あのときボウトがひっくりかえったのさ。そこでおまえさんをかかえて、わしはやっとここまで泳いできたんだよ、のんきだな、ミル爺さんは。」
ジムは笑い出しました。
爺さんは、はじめて、親切なジムのおかげで命びろいをしたのだと知ると、うれしくって涙がぼろぼろこぼれました。それにしても船の人たちはどうしたろうと、遠い沖の方をみると、船はもうすっかり波につかって、帆柱だけが青い海の上にみえます。