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うみがよんだはなし
海が呼んだ話
小川 未明
「日本の子供」1939(昭和14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,700 字 · 8 页
船といっしょに沈んだのだから、船室の内にいるに相違ないというので、あの人は、また海の底へもぐったのだ。」
「怖ろしいなあ、おじさん、気味が悪くなかったろうか。」
「見つかったんですか。」と、いっしょに、お父さんの話を聞いていらしたお母さんが、いいました。
「また、船室へ入って、すみからすみまで、懐中ランプで照らして、さがしたけれど、やはり一人の死体も見つからない。まったくおかしなことがあるものだと思って、あきらめて出ようとしたとたん、ちょっと上を見ると、八人の死体が、ぴったりと天じょうについて、じっと自分の方を見下ろしていた。このときばかりは、さすがに、あの人もぎょっとして、もうすこしで後ろへひっくり返りそうになった。それから、潜水業というものが、いやになって、陸で暮らしたいという気が起こったという話なんだよ。」
お父さんの話は、終わりました。
聞いていたお母さんも、お姉さんも、清吉も、
「そうだったでしょうね。」と、そのときの、おじさんの気持ちに、同情されたのでありました。
清吉は、このことを、おじさんの店へ遊びにいっても、けっして、口にはしなかった。