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うみぼたる
海ぼたる
小川 未明
「赤い鳥」1923(大正12)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,403 字 · 7 页
やがて娘は、年ごろになってお嫁にゆかなければならなくなりました。
両親は、どこか、いいところへやりたいものだと思っていました。それですから、方々からもらい手はありましたが、なかなか承知をいたしませんでした。
どこか、金持ちで、なに不自由なく暮らされて、娘をかわいがってくれるような人のところへやりたいものだと考えていました。
すると、あるとき、旅からわざわざ使いにやってきたものだといって、男が、たずねてきました。そして、どうか、娘さんを、私どもの大尽の息子のお嫁にもらいたいといったのです。
両親は、けっして、相手を疑いませんでした。先方が、金持ちで、なに不自由なく、そして、娘をかわいがってさえくれればいいと思っていましたので、先方がそんなにいいとこであるなら、娘もしあわせだからというので、ついやる気になりました。
ただ、娘だけは、両親から、ひとり遠く離れてゆくのを悲しみました。
「遠いといって、あちらの山一つ越した先です。いつだってこられないことはありません。」と、旅からきた男は、あちらの山を指さしていいました。
その山は、雲のように、淡く東の空にかかって見られました。