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うみぼたる

海ぼたる

小川 未明

「赤い鳥」1923(大正12)年8月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,403 字 · 7 页

青空文庫

「そんなに、泣かなくてもいい、三年たったら私たちは、おまえのとこにたずねてゆくから。」と、両親はいいました。

娘は、涙にぬれた目を上げて、東の方の山をながめていましたが、

「どうか、毎日、晩方になりましたら、私があの山のあちらで、やはり、こちらを向いてお父さんや、お母さんのことを、恋しがっていると思ってください。」といいました。

これを聞いて、父親も、母親も、目をぬらしたのであります。

「なんで、おまえのことを片時なりとも忘れるものではない。」と答えました。

娘は、とうとう旅の人につれられて、あちらの郷へお嫁にゆくことになったのであります。

娘がいってから、年をとった父親や、母親は、毎日、東の山を見て娘のことを思っていました。けれど、娘からは、なんのたよりもなかったのです。

娘は、まったく、旅の人にだまされたのでありました。なるほど、いってみると、その家は、村の大尽であります。また、舅も、姑も、かわいがってはくれましたけれど、聟という人は、すこし低能な生まれつきであることがわかりました。

彼女は、この愚かな聟が、たとえ自分を慕い、愛してくれましたにかかわらず、どうしても自分は愛することができなかったのです。