轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かいりゅう

海流

宮本 百合子

「文芸春秋」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,977 字 · 72 页

青空文庫

絣の筒っぽに黒メリンスの兵児帯を巻きつけている順二郎は、温室の床の三脚に腰をおろし嵐の音に耳を傾けた。風の音は順二郎の心の中にもある。自然の嵐は威厳をもって圧倒的に正々堂々と、順二郎の内部の旋風はやや臆病に、逡巡をもって、しかも避け難い力に押されて、互に響き合い、ひきよせ合っているようだ。その年の順二郎と宏子の短い正月休暇は奇妙な工合に終った。或る晩、温室用の石炭の話が出た。台所の横にある炭小舎からいちいち運ぶのは面倒くさいから、温室の横へトタンのさしかけを作ろうと順二郎が云い出したのであった。

「じゃ大川へ電話をかけて人足でもよこさせなきゃなるまい?」瑛子が云った。

「いいえ。僕自分でやる。何でもないもん。――それに――僕温室のことではなるたけお金つかわないことにしたんだ」

順二郎の節倹なことは家じゅうに有名であった。植物の種を植木会社からとりよせるにしても二つ三つカタログを照らし合わせて、抜萃をつくって、瑛子に書きつけを示し、これが一番いいから幾ら幾らと二円三円の金でも出して貰う。順二郎のは、しわいのではなくて、気質から来る周密なやりかたなのであった。