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きえたうつくしいふしぎなにじ
消えた美しい不思議なにじ
小川 未明
「童話」1921(大正10)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 8,038 字 · 16 页
」と、妹は喜びました。
そのとき、ふとしたきたないふうをした人間が、はだしでみんなの通る間を、とぼとぼと歩いていました。
「あの人間は、どうしたのだろう。」と、妹は思いました。自分の投げた幸福の砂が独りこの人間にだけかからないはずはない。それにしても、この貧しげな有り様はどうしたのだろうと不思議に思われて、なおもその人間のゆく先を見つづけていました。
そのきたならしいふうをした人間は、にぎやかな街の中を通って、さびしい町はずれの方にやってきました。するとそこには、いままでと反対に、みすぼらしい破れた小舎が幾棟もつづいていました。そして、その中には、みんなこの人間のようなきたないふうをした、青い顔の人間がうようよとして住んでいるのでありました。そこでは、子供が泣いています。病人が苦しんでいます。けれどそれをいたわることも、また救うこともできないほどに、みんながなにか仕事をしたり、働いています。そして貧乏をしています。
「これは、いったいどうしたことだ?」と、妹の顔は、驚きと怪しみのために血の気がだんだん失せてゆくのでした。自分の投げた幸福が、この人たちだけゆきわたらないはずがないのに、これはいったいどうしたことだろうと判断に苦しんだのであります。