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りんらくのせいしゅん
淪落の青春
「ろまねすく 第一巻第一号」ろまねすく社、1948(昭和23)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,729 字 · 36 页
この村から十里ほど離れた村の地主の娘だ。
正一郎は貞吉が帰還した二日目にはもう策戦をあみだして、忠雄の寡婦と貞吉に結婚しろという。忠雄には五万円ほど分禄してやった。それがみすみす他人の生活費になるのもつまらぬ話だから、三男の寡婦のところへ入聟すれば、ムダなものが一つもなくなって、万事都合がよろしい。
貞吉はたゞヘラヘラと変テコな笑い顔で、ウンともスンとも返事をしないから、正一郎は馬鹿な奴めという顔をして、
「なア、オイ、お前には分家分禄、そんなもの、ありゃせんぞ。御覧の通り、敗戦以来、地主は田地召しあげ、食う米はない、ヤミの米買う金もない、半年あとに新憲法、どっちみちお前を分家する必要もなし、分禄してやる必要もない。新憲法施行の日から、オヌシは独立の一家の主人、よその旦那だから、このウチから黙って出て行って貰う。分るだろうな。いゝも、悪いもない。承知、不承知もない。法の定めるところだ。だから、忠雄の五万円、お前が継ぐのが身の為だ」
「新憲法はいつからだね」
貞吉がきくと、正一郎は渋い顔を深めて、
「何の用がある?」
新憲法施行の前に、貞吉が訴訟を起すとでもカングッタ様子である。