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しんざんのあき

深山の秋

小川 未明

「真理」1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,725 字 · 10 页

青空文庫

そして、まだ鉄砲の手入れをしておかなかったのを、迂濶であったと気づいたのです。その翌日、昼すぎごろのこと、入り口へなにかきたけはいがしたので、見ると怪物が顔を突き出していました。主人は、びっくりして、声も立てられずにしりもちをつきました。なぜなら、意外にも大きなくまだったからです。

彼は、もう命がないものと思い、体じゅうの血が凍ってしまいました。

「どうぞ、お助けください。」と、心の中で、ひたすら神を念じたのでした。

けれど、くまは、すぐに飛びかかってはこなかった。かえって、なにか訴えるような目つきをして、手にはかきの木とまたたびのつるを握っていました。そして、いよいよくまが、彼に危害を加えるためにやってきたのではないことがわかると、

「命さえ助けてくれたら、なんでもきいてやるが。」と、おそるおそる顔を上げて、彼は、くまのすることを見たのでありました。くまは、さも同意を求めるように、ただちに、酒だるの前にきて、じっとそれに見入っていたのです。

「ははあ、酒がほしくて、やってきたのか。」と、主人は悟りました。

「もし、俺が、酒をやらなければ、くまは、きっと怒って、俺をかみ殺すにちがいない。