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ふかがわにょうぼう
深川女房
小栗 風葉
「新小説」1905(明治38)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页
誰でも言うことだけど、人間はもう体の健なのが何よりね」
「だが、俺のように体ばかり健で、ほかに取得のねえのも困ったものさ。俺はちっとは病ってもいいから、新さんの果報の半分でもあやかりてえもんだ」
「まあ、とんだ物好きね。内のがどう果報なんだろう?」
「果報じゃねえか、第一金はあるしよ……」
「御笑談もんですよ! 金なんか一文もあるものかね。資本だって何だって、皆佃の方から廻してもらってやってるんだもの、私たちはいわば佃の出店を預ってるようなものさ」
「そりゃどうだか知らねえが、何しろ新さんはお光さんてえいいお上さんを持って……ねえ、こいつは金で買われねえ果報ださ」
「おや、どうもありがとう。だが、もうそんなことを言ってもらって嬉しがるような年でもないから大丈夫自惚れやしないからたんとお言い」とお光はちっとも動ぜず、洗い髪のハラハラ零れるのを掻き揚げながら、「お上さんと言や、金さん、今日私の来たのはね」
「来たのは?」
「ほかでもないが、こないだの、そら、写真のはどうなの?」と鋭い目をしてじっと男の顔を見つめる。
「うむ、あれか、可愛らしいね」
「可愛らしいからどうなの?」