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せいぞうとぬま
清造と沼
宮島 資夫
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,864 字 · 12 页
一
清造はその朝になって、やっとにぎやかな町に出ました。それは、清造の生まれた山奥の村を出てから、もう九日目くらいのことでした。それまでにも、小さな町や村は通ったことがありましたが、これほどにぎやかな町に出たのはこれがはじめてです。町の両側には新しい家がならんでいました。そうしてそれらの店には、うまそうなおかしだの、おもちゃのようにきれいなかんづめだの、赤や青のレッテルをはったびんなどが、みがきたてたガラスの中にかざってありました。
すきとおるような、冬の朝の日の光に、それらの店やびんやおかしが、美しく光っていました。店の前に立てた、赤地に白くそめ出した長い旗が、氷をふくんだような朝の風に、はたはたと寒そうに鳴っていました。
ほんとうは、それはまだ、東京の郊外の、ちょっとした新開地にしかすぎません。けれども、今まで山の中にばっかり育って、あまり町を見たことのない清造の目には、それがどんなに美しくうつったことでしょう。清造はすっかり驚きました。そうしてこの町をひいていく、馬力や牛車がどんなに長くつづいているのだろう。こんなたくさんの車や人が、どこからこうして出てくるのだろう。