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せいぞうとぬま
清造と沼
宮島 資夫
「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,864 字 · 12 页
それを見ると、かれはふしぎに元気を回復するのでした。
二
お昼ちかくまで、清造は、長い町を歩きました。町はずれのむこうの方に、汽車の通る土手の見えるへんまでくると、その町は少しさびれてきました。清造はぺこぺこにへったお腹をかかえて、もう目がまわりそうにだるいのをこらえながら歩いてくると、ふと道の片側に、いろいろな絵のかかっている店がありました。それは正月を目の前にひかえて、せわしくなった凧屋でした。凧屋の主人は、店の中にひとりすわってはり上げた凧に糸目をつけたり、骨組をなおしたりして働いていました。
清造はもう疲れきってしまったので、凧屋の前に立って、凧の絵を見るようにして休んでいました。ろうをぬったひげだるまの目は、むこうの隅でぴかぴか光っているし、すさのおのみことは刀を抜いて八頭の大蛇を切っていました。自来也や同心格子や波に月は、いせいよく、店の上にぶらさがってふわふわ動いていました。清造はそんな凧を見たのは、はじめてでした。
凧屋のおやじさんは、ただせわしそうに下をむいて熱心に糸目をつけているので、清造もおびえずに、店さきに近よって、じっと店の中のいろいろな絵をながめまわしました。