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こはん

湖畔

久生 十蘭

「文藝」1937(昭和12)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,180 字 · 47 页

青空文庫

と承諾してしまった。

決闘は翌日ロンシャンというところで行われた。まず相手方から撃ちだしたが、その際、俺は怯懦な畏怖心に襲われ、思わず頭を右に傾けたので、飛来した弾丸は右の顳と耳殻を破壊し、首と肩の間に嵌入した。頭さえ曲げなかったら、横鬢を掠めるくらいのところですんでいたはずで、いわばこれは卑怯のむくいともいうべきものであった。

その場から病院へ担ぎこまれ、時を移さずに止血の手当を加えたので、危く命だけは助かったが、そのために俺は実に異様な面相になッてしまった。テラテラに禿げた赭黒い瘢痕が右の眼尻から顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)一帯に隆起し、その上に七八本の毛がマバラに生えている。右の眼は裂創の縫合のために恐ろしいまでに吊りあがり、右の耳殻が無くなって、そこに干貝のような恰好をしたものが申訳のように喰ッついている。俺は極端な虚飾家で、おのれの不幸な面相をいくらかでも改正したいと思い、日夜容姿を整えることにばかり腐心していたのだから、この負傷は俺にとって耐えられぬ痛事だッた。半年ほどの間に、一体、幾つ鏡を抛って壊したかも知れぬ。

果せるかな、人々は俺の醜悪な面相を恐れ忌み、様々に嘲笑するのが感じられるものだから、わずかに悲愁を支え、寂寥を慰めていた自己心までも残りなく崩壊しつくし、恋愛はおろか