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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

「神月より、……おや、平時の字と違ってやしなくッて?……何だか手が違ってるようだねえ。」

あえて疑うというではないが、まさかと思う心から人にも、確めてもらいたいので、わざと不審げに呟いた。

「わざッと手を替えてお書きなさいましたあね、そりゃ、お前さん。」と婆々は極めて鹿爪らしい。

「そうねえ、何だか包が大きいわねえ、何だしら。」

玉手箱という形で両手に据えながら目を瞑る。

「何でげしょう。」

「何だか、」

「そうさね。」

「一番あてッこで、丁と出たらまた頂戴は、どうでげすえ。」

源次は鷹揚に、

「下司張るな下司張るな。」

「どうせ詰らないものよ。」と蝶吉は笑いたそうにして押耐える。

円輔は例に因って、

「よッ!」

「沢山おひゃらかして下さいな。」と怒ったのでも何でもない、いそいそ膝の上へ抱下して斜にした。

蝶吉は簪を抜いて、そっと持って、

「邪険に封をしてさ。」といいいい、名工が苦心の眼で、瞶めて、簪の尖で、封じ目を切って解く。

上包はくるくると開いて、やまと新聞の一の面が颯と膝の上に広がった。中は、中は、手文庫ばかりの白木の箱。

「さあさあ御覧じろ、封が解るに従うて、お蝶さんの、あの顔が段々弛んで来る処を、」