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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

「あれえ。」

下階では哄と笑う声、円輔は屹と見得をして、

「今のは確に、」

「叱!」と押えて源次はしてやったという顔色。

「雲井の印紙を引剥がして、張り付けて、筆で消印を押したお手際なんざあ、」

「どんなもんだい。」

「いや、御馳走様でございますよ。」

「口惜しい!」と泣く声が細く耳を貫いて響いたが。

下じめの端を両手できりきりと〆めながら、蹌踉いて二階を下りて来た、蝶吉の血相は変っている。

顔も蒼白く、目が逆釣り、口許も上に反ったように歯を噛んで、驚いて見る下地ッ子の小さな手を砕けよと掴んでぐッと引着けた。

「あれ、姐さん。」

「さあ、言っとくれ、言っとくれ、承知しなくッてよ、私の、私の人形をあんなにしたなあ誰だ。いいえ、知らないッたって不可いの、あんなにお前さんにも頼んでおくものを、……」と力を籠めておさえるようにいったが、ぶるぶる震える、額には筋が通った。

「手も足もばらばらよ、酷いッたら、酷いことよ。さあ、誰だか、いっておしまい、いえ、聞かしておくれ。蔭になり日向になり、しょっちゅう庇ってやる姐さんだ、お聞かせなね、ええ! 畜生言わないかい。」

「痛い、痛い、姐さん。