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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

「ざまあ見やがれ、」とふてを吐いて、忘れずに莨入を取って差し、生白い足を大跨にふいと立って出ようとする。

「待ちゃあがれ。」

「ええ、」

「悪戯をしたなあ、源の野郎、手前だな。」

「いいえ、私だ。」とすっきりいって、ずッと入ったのは大和屋の姐さんで、蔦吉という中年増。腕も器量も凄いのが、唐桟ずくめのいなせな形で、暴風雨に屋根を取られたような人立のする我家の帳場を、一渡しながら、悠々として、長火鉢の向側、これがその座に敷いてある、黒天鵝絨の大座蒲団にきちんと坐って、「寒い。」と肩を一つ揺っておいて、

「皆静にしておくれ、お蝶さんお前もおすわり。」

「何ですッて、」と蝶吉は目を据えて立ったまま、主婦が方に向直って、

「悪戯をしたなあ、お前さん、」と屹という。

「あい、私さ、」

「何、」

「突立って、何だ。」

「坐ったらどうおしだい。」

「おやおや、この女は、目が上ってるよ、水でもぶッかけておやんなね。」

「まあ、姐さん、」とばかりで円輔は遣瀬がない。

「お蝶私は主人だよ。」

「は、私お前さんの抱妓じゃありません、誰が、そんな水臭い、分らない奴に抱えられるもんか。人が知らないと思ってさ、薬を飲ませてさ、そのせいで、私逢えないんじゃありませんか、命もいらない人よ。