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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

二

」

底意なき人達は三人一堂に笑った。

「賑かだね、柳沢、」と窓の下の園生から声を懸けたものがある。

二

一番窓に近い柳沢は、乱暴に胸を反して振向いたが、硝子越に下を覗いて見て、

「竜田か。」

「誰か来ているかい。」

「根岸の新華族だ、入れ。」と云って座に直る。

同時に、ひよいと窓の縁に手が懸った、飛附いて、その以前、器械体操で馴らしたか、身の軽さ、肩を揺り上げて室の中に、まずその瀟洒なる顔を出したのは、竜田、名を若吉というのである。

梓を見て笑を含み、

「堪忍してやれ、神月はもう子爵じゃあない。」といいながら腕組をして外壁に附着いたままで居る。柳沢は椅子をずらして、

「まあ入れ、ちょうど可い。今その事に就いて、神月問題というのをはじめた処だ。ちょっとその休憩時間よ。神月が酷く弁論に窮して、き様の来るのを待っていたんだぜ、竜田が居たらばッてそういってな。」

聞きも果てず、満面に活気を帯び来った竜田は、飜然と躍込み、二人の間へ衝と立って、卓子に手を支いたが、解けかかる毛糸の襟巻の端を背後へ撥ねて、

「可し、また例の筆法で苦しめたか、神月君、」

親しげに、

「よく、僕を待っててくれました、もう大丈夫だ、心配をしたもうな。