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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

うろ覚えに実の母親は知っていたけれども、年紀も分らねば所も知らず、泣けば舌の尖を捻じられるから、ほろほろ、涙を流しては、といった、蝶吉はその時、崩折れて涙を払った。

土手など通ると、余所の児が母親に手を曳かれて行くのを見たり、面白そうに遊んでいるのを見るたびに、同じ人間がなぜだろうと、思わぬ時といってはない。ある時も、田圃のちょろちょろ水で、五六人、目高を掬っているのを見ると、可羨しさが耐えられないから、前後も弁えず、裾を引上げて、袂を結えて、私も遊ばして下さいな、といって流に入った。やい、売婦め、お玉杓子め、汚らわしい! と二三人、手と足を取って仰向けに引くりかえしたので、泥水を飲んで真蒼になって帰ると、何条これを許すべき、突然細紐でぐるぐる巻、濡しょびれたまま高い押入の中に突込まれた。半日とその夜の夜中二時頃まで、死んだもののようになってる中に、私ばかり、情ないものを、辛いものを、慰めてこそくれずとも、売婦だといって突転がした町の奴等。

内で芸事をせたげるのも、皆手前達が甘やかされて、可愛がられて、風にもあてず育てられた、それほどの果報にも飽き足らず、にきびの出る時分にはその親に泣を見せて、金を掴んで、女をもてあそびに来せるためだ。