轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
そうせきのじんぶつ
漱石の人物
和辻 哲郎
「新潮」1950(昭和25)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,438 字 · 23 页
手紙ではそういうこともどしどし書くし、また人からもそういう手紙を盛んに受け取ったであろうが、面と向かって話し合うときには、できるだけ淡泊に、感情をあらわに現わさずに、互いに相手の心持ちを察し合って黙々のうちに理解し合うことを望んでいたように見えた。これはあるいは漱石に限らず私たちの前の世代の人々に通有な傾向であったかもしれない。私の父親などもそういうふうであった。私は父親から愛情を現わす言葉などを一度も聞いたことはない。言葉だけを証拠とすれば、父親には愛がなかったということになるが、そうでないことを私はよく理解していた。しかりつける言葉の中にだって愛は感じられるのである。しかしそういう態度は、親子の愛情などを何のこだわりもなしにあけすけに露出させる態度と、はっきり違っている。昔の日本の風習には、感情の表現にブレーキをかけるという特徴があったと思う。その点で漱石は前の世代の人であった。それだけに漱石は、言葉に現わさずとも心が通じ合うということ、すなわち昔の人のいう「気働き」を求めていたと思う。
そういう漱石が、毎週自分のところに集まってくる十人ぐらいの若い連中――それは毎週少しずつ顔ぶれが変わるのであるから、全体としては数十人あったであろうが――そういう連中の敬愛にこたえ、それぞれに暖かい感じを与えていた