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ひとこおりのシャスタさん
火と氷のシャスタ山
小島 烏水
「改造」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,333 字 · 16 页
森林帯の尽きるところから、大雪渓が始まるが、この雪渓の長々しい傾斜は、さすがに白馬岳あたりの比ではない。翌くる十一日の朝、一行はこの単調の雪渓を、のたり、のたりと登って、巨大な堆石を戴いた雪の「テーブル」の側へ立って写真を撮ったり、雪の穴ぼこの中へ、更紗の紋でも切り篏めたように、小さい翼を休めているところの、可憐なる高山蝶を、いじくったりして、雪渓を、ものの三千五百尺ばかり登ると、富士山の胸突八丁にも喩えられるところの、火口壁へとぶつかった。これを越えると、絶頂に辿りつくことになるので、ここでさえ、高さは一万三千尺近い見当である。最後の噴火のあったという「レッド・ブラッフ」の赭ら岩が、眉を焦すばかりに、近く聳えている。足許一面に、熔岩や、焼石が狼藉して、歩きにくい。生憎時計を見ると、かれこれ午後二時に近い、空気も稀薄になり始めて、絶頂まで、遅々たる足取りでは、今夜中にホテルまで、戻り得られるか否かも、覚束ないので、ここから下山することにした。
シャスタへの登路は、氷河踏査を主とするならば、私たちの路を取らずに、南のマック・クラウド村から登るか、またはやや北行して、シャスタとシャスチナ間の、窪地を目指して登る方が、よかったということを、後から聞かされた。