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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
そして誰もが、死の苦悶のような表情で、目を閉じ、歯を喰いしばった。
ネッドは、油の海へいやというほど顔をおしつけられた。張は配電盤へおしつけられ、服のお尻のところへ火花がぱちぱち飛んだ。河合はマートン技師の股ぐらへ首をつっこんでしまった。山木は、後へ急に引かれて、鋼鉄の梁に宙ぶらりんとなった。
時間にして四十秒の短い間だったが、人々はそれを百年のように永く感じた。その間人々の息は停り、心臓さえ、はたと停ってしまったように思った。
「うまく行ったぞ。重力は減った。墜落の速度は落ちた。た、た、助かるぞ、これなら……」
最初に声を出したのは、艇長デニー博士であった。博士の最後的努力が遂に効を奏したのだった。
嵐が急にやんだように、狂瀾怒濤が一時に鳴りを鎮めたように、乗組員たちの気分は俄かにさわやかとなった。立っていた者は、へたへたとその場に崩れるように尻餅をついた。
油の海の中に気を失っているネッドが、河合によって助け起された。そこへマートン技師が駆けつけて、活を入れてくれたので、ネッドは息をふきかえした。助けられた者も、助けた者も、共に顔はまっ黒で、全身から油がしたたり、まるで油坊主のようであった。