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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「……高度五百メートル、六百メートル。少し上昇していきます」

いつ、元の双眼鏡へ戻ったか、山木が元気な声で叫んだ。

と、デニー博士がよろよろとよろめきながら、指揮台の手すりを力に立上った。

「マートン技師。重力中和機を調整するのだ。着陸用意。舵を下げろ。五度へ下げろ。それから零度へ戻せ……」

マートンが、油をはねとばしながら駈け出した。

「……大きな密林だ。密林だ。あっ、密林が切れて、今度は海だ。海、海……」

山木が叫ぶ。

「右旋回……」デニー博士の声。

「なに、やっぱり駄目か。……噴流器の右側の列を使うんだ。早く早くしろ」

博士のこの言葉がなかったら、宇宙艇はむざんにも火星の海に頭を突込んで沈んでしまったろう。そうなれば折角ここまで宇宙艇を護りつづけてきたデニー博士以下の乗組員たちも、哀れ、火星着陸の声を聞くと共に異境の海に全員溺死してしまったであろう。博士の沈着にして果断な処置が、危機一髪のところで全員を救ったのだ。

「沙漠! 沙漠!」

右側の噴流器から、その全部ではないが、二三本の猛烈なる黒色瓦斯を吹きだしたので、宇宙艇はお尻を右に曲げたとたんに、海が無くなって、白い沙漠が現れた。