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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「引越したんだよ、引越先はなんでもアリゾナ州の方だという話だがな。とにかく引越して貰って幸いさ、この近所で火星の鬼とつきあいなんかされては村の迷惑だからね」

ジグスは、首をすくめて見せた。

「なぜ引越したんでしょう」

「それはお前、こういうわけだ。つまりアリゾナの方が、ここよりは土地が高いから、それだけ火星に近いという便利があるからよ」

「はははは」

「笑う奴があるか、本当のことだぜ。それに三十年も使った塔だから、もう古くなって、あの仙人の自動車みたいにがたがたになったのさ。それでアリゾナに新しい塔を建てたというわけだ」

「お金はあるのですね、そんなに塔を建てかえるようでは……」

「それはあるさ。火星探険なんて変った仕事だからなあ。そういう変った仕事には、ふしぎと金を出す人間がいるのさ」

「本当に博士は火星探険に出かけるつもりなんでしょうか」

「出かけるつもりはあるらしい。だが、あんなよぼよぼでは、火星まで行き着かないうちに死んでしまうだろう。なにしろ火星まで行き着くには十年か二十年はかかるからなあ」

「そうでしょうね。それで、一体何に乗って行くんですか」

「それが全然わからないのさ、だから、博士の火星探険はお芝居で、結局行かないうちに博士が死んで、協会は解散になるといっている者も居るが、わしはそうは思わないね。