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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
博士は何か深く考えて、秘密に乗物を用意していると思うね。それを皆に明かさないのは、何しろ火星まで行き着くための乗物だから、その秘密を知られないように隠してあるんだと思う」
「おじさんは、なかなか博士びいきなんですねえ」
「博士びいき? そういうわけじゃねえが、あの爺さんの姿は、もう三十年あまりもこの二つの目で見ているんだから、いろいろ悪口をいうものの、本当は人情がうつらぁね。それに近年博士に対して大人気ない攻撃をする奴がだんだん殖えて来るのには、わしでも腹が立つね。わしの力で出来ることなら博士に力を貸して威勢よく火星探険へ飛出させたいと思うが、何しろ博士があのとおりよぼよぼじゃあ、後押しをしてもその甲斐がないよ」
そういうところをみると、ジグスはなかなか博士の同情者の一人らしい。
「おや、デニー博士が、張――いや牛頭仙人に何かお伺いをたてているぜ」
と、このとき山木がびっくりしたように叫んだ。
そのとおりだった。デニー博士は箱車の覗き穴へ自分の顔をぴったりと当てて、牛頭仙人とさかんに押問答をやっているようだった。そしてラッパからしゃがれた張の作り声が、はっきりしない言葉となって飛出すたびに、そのまわりに集っていた町の人々は、どっと笑いくずれるのであった。