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むざん
無惨
黒岩 涙香
「小説叢」1889(明治22)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,602 字 · 56 页
のだから途中で向の違う事は有ません此三筋を斯う握って居たのです、其中でヘイ此一本が逆髪です外の二本とは反対に向て居ます(荻)成る程(大)サア何うです大変な証拠でしょう(荻)何故―(大)何故だッて貴方、人間の頭へは決して鱗の逆に向た毛の生る者では有りません、何の様な事が有ても生た儘の毛に逆髪は有ません、然るに此三本の内に一本逆毛が有るとは何故でしょう即ち此一本は入毛です、入毛や仮※《かもじ》などには能く逆毛の在る者で女が仮※を洗ッて何うかするとコンガラかすのも矢張り逆毛が交ッて居るからの事です逆毛と順の毛と鱗が掛り合うからコンガラかッて解ぬのです頭の毛ならば順毛ばかりですから好んばコンガラかッても終には解ます夫や最う女髪結に聞ても分る事(荻)夫が何の証拠に成る(大)サア此三本の中に逆毛が有て見れば是は必ず入毛です此罪人は頭へ入毛を仕て居る者です(荻)夫なら矢ッ張り女では無いか女より外に入毛などする奴は無いから(大)爾です私しも初は爾思いましたけれど何うも女が斯う無惨/\と男を殺すとは些と受取憎いから色々考えて見ますと、男でも一ツ逆毛の有る