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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

たはずだ。しかし彼女は、ほとんど外国をまわっていたし、またいつも洋装ばかりしていたので、こうした場合、錐がなければ、鼻緒はすげられないものと思いこんでいた。だから、房枝は決心をして、

「ちょっと、ここでお待ちになっていてください。あたくし、そのへんのお家で、錐をお借りして、鼻緒をすげてまいりますわ」

と、道子夫人にいってかけだした。

道子夫人は、それをとめたが、房枝は、どんどんかけだして、一軒の家へとびこんだのであった。

夫人は、房枝のあとを見送って、呆然とその場に立っていた。

すると、そのとき、向こうから一台の自動車が、警笛を鳴らしながらやって来たので、夫人はまたかとおどろき、いそいで道の傍にさけた。そこはちょうど両側が沼になっていて、さけるのにはたいへん不便なところだった。

自動車は、急にとまった。

「おや、彦田博士の奥さんじゃありませんか。そのお姿はどうなすったのです。さあ、私がお送りしましょう。どうぞこの車へおのり下さい」

夫人が、顔をあげてみると、それは、ちかごろしばしば博士邸へたずねてくる青年探偵の帆村荘六だった。

道子夫人は、車に乗ろうとはせず、てみじかに、ここで起った出来事をのべたのである。