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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

「大芝居?」

検事が大芝居などといいだしたので、一座はおどろいて目をぱちくり。

「大芝居というほどのものでもないが、さっそく棺桶を一つ、署内へ持ってこさせるのだ」

「はあ、棺桶を。棺桶をどうするのですか」

署長は、検事が何をいいだすことやらと思い、たずねかえした。

「その棺桶には、人間と同じくらいの重さのものを入れ、そのうえで、蓋には釘をうち、封印をしてトラ十の泊っていた、あの安宿へ持っていくのだ」

「ははあ」

「つまり、トラ十は署内で死んだから、屍体を下げ渡す。だから知合の者が集まり、通夜回向をして、手篤く葬ってやれとむりにでも、宿の主人に押しつけてしまうんだ」

「なるほど。毒ずしをトラ十が食べて死んでしまったという事実の証明をやるわけですね」

「そのとおりだ。すると、犯人の方じゃ、うまくいったと安心をし、そして、油断をするだろう。それから後のことは、いうまでもあるまい」

「なるほど、なるほど。それは名案の芝居ですなあ。しかし、その棺桶をそのまま焼場へ持っていかれては、芝居だということが分かってしまいますねえ。なにしろ、棺の中には、トラ十の身代りに、沢庵石か何かを入れておくわけですから、火葬炉の中でいくら油をかけて焼いてみたところが石は焼けませんからね。