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ちちのてちょう
父の手帳
宮本 百合子
「中條精一郎」(追悼録)、国民美術協会、1937(昭和12)年1月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,342 字 · 13 页
別の云いかたで表現すると、父は依然として忙しく、活気に充ちているが、その忙しさの内容が変り、手帳の内容から、興味ふかいプランの成長過程の快い眺め、そういう労作の面が縮少されて来たのでした。
六十九年の生涯に、父は何冊の手帳をもったでしょうか、きょう、食堂のヌックに置いて生前父が使っていた書物机の奥をしらべていたらば、一冊のスケッチ帳形の手帳が出て来ました。茶色クローズの表紙で鼠色紙の扉にノート風の細かいペン字で、
(1) 大学図書館ヲ公開スル事
(2) 東洋美術発行ノ事
とあり、別行に、これは鉛筆で「電燈タングステン燈よろし」続けて、「木彫専門」「襖紙一式」等各建築関係専門店の名と所書きが並べられている。これは余程古いものであろうと好奇心に動かされて見てゆくと、方眼紙の第一頁に一九〇七年十月三十一日と英語で日附、「横浜倉庫」という見出しの下に、
(1) 埋立立坪 二円五十銭
(2) 石工 1.20
(3) 大工 1.00
(4) 人夫 .60
倉庫一坪(地下室及地層)八十二円
などと記入されています。
続いて、小さい住宅プランを挾んで「日記。