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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

「形像の生産に於ける生産的構想力のこの順次総合の上に延長の学(幾何学)はその公理と共に基き、その公理は感性直観の先験的制約を云い現わす」(K. d. r. V. S. 204)と云うようにカントに於ては幾何学の対象と直観空間とは直ちに一と考えられるのであるが、直観そのものと直観の公理とは何と云っても一応別なものと考えなければならぬ。公理から矛盾律によって始めて他の命題が帰結するにしても如何なる命題も総て直観内容でなければならぬ点に於てそれは公理と少しも異る処はない。ただカントによれば公理は「直接に確か」であるというのである。併し直観が直接に確かであるとか直接に確かではないとかいうことはそれは直観の判断であって直観そのものの立場ではない。直観そのものは総て直接でなければならぬ。最も煩瑣な証明を必要とする定理の内容も決してそれだけ間接であるのではない。「直接に確か」であると云う「直接さ」は直観それ自身の「直接さ」ではなくして直観の判断のそれである。直観そのものには前後はない。それはただ「論証」に於てのみあることである。公理はこのような論証の出発点に外ならない。