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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

室生犀星『犀星王朝小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:荻吹く歌、舌を噛み切った女、玉章、津の国人、野に臥す者、花桐、姫たちばな。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 页

青空文庫

」

「どこが似合いまして?」

「美しさが青い光のように見え申す、頬のいろも似ている。」

先の車の声は笑いふくんで呼ばわり、あとの女車の声もおなじ笑いをもらした声音だった。

「さよう仰せられても筒井はなびきませぬぞ、お心はとうにいただいてはいますけれど。」

「心をもらって外のものをもらわないということはない、貞時、一生かかってもそなたを逸らすことは毛毫ござらぬ。筒井どの、覚悟をされい。」

前の車の中の声は愉しげに歌うように叫んだ。

「覚悟はとうにいたしおります。」

あとの車の声はやや低く、しみじみと答えた。

「たしかに覚悟はいたされてか。」

「たしかに。」

二人の声はふっつりと切れた。静かに車は土手の草の上をさっさっと踏み分け、一層、静かなあたりに息づかいを洩らしていた。そして一旦切れた声音はふしぎに秘密をまもるように、再び続けられることがなく、野の道を馳って行った。飛び交う蛍の数がすくなくなり、川は道からしだいに遠のいて行くほどに、町がちかづいて見えた。

「筒井どの、なにか話されい。」

「みんな申し上げました。筒井、なにも、お話申すこととてもなくなりましてございます。