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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页
あれ、そのことでかいな?」
「そうだんが。これ見て御覧、―――」
と、庄造は両腕を突き出して、シャツの袖をまくり上げた。
「これ、そこらじゅう蚯蚓脹や痣だらけだ。顔にかてこれ、まだ痕残ってるやろ。」
「何でそんなことしられたんや?」
「焼餅だんが。―――阿呆らしい、猫可愛がり過ぎる云うて焼餅やくもん、何処の国にあるか知らん、気違い沙汰や。」
「品子かてよう何のかんの云うてたやないか。お前みたいに可愛がったら、誰にしたかて焼餅ぐらい起すわいな。」
「ふうん、―――」
幼い時から母親に甘える癖がついているのが、この歳になってもまだ抜け切れない庄造は、だだッ児のように鼻の孔を膨らがして、さも面白くなさそうに云った。
「―――お母さん福子のこと云うたら、味方ばっかりするねんなあ。」
「けどお前、猫であろうと人間であろうと、外のもん可愛がってて、来たばかりの嫁のこと思うてやらなんだら、気イ悪うするのん当り前やで。」
「そら可笑しい。僕、いつかて福子のこと思うてまんが。一番大事にしてまんが。」
「そうに違いないのんやったら、ちょっとぐらいの無理聴いてやりいな。わてあの娘からもその話聞かされてるねんが。