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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

そして、それは只何年ぶりかでお会いしたというだけのことではない、生活のこころもちをあなたに感じさせ、どんなにいいきもちか分らないから、私もうれしい、と。咲は、きっとわたしも変ったとお思いになったでしょうね、と云って居りました。いかがでした? この前泰子をだっこしてお会いしたきりでしょう? 四五年は少くとも経って居ります。咲は一つ年下よ。月末までいて帰ります。

岩本の娘さんの一人が戸畑へお嫁に行っていたのではなかったでしょうか。あすこは鋳鉄で日本一なのですってね。どうしているでしょうね、小さい町は五機ぐらいで十分なものらしいのね。野原へハガキ出して見ましょう。

六月十三日は母の十年でした。十二日に寿が出て、十三日は何年ぶりかで落付いて二人で墓詣りいたしました。寿と二人で、せめて墓参ぐらいしてやらなくては、全く親に申しわけないと思ったわ。それから、はじめて根岸の春江(咲の姉)のところへ廻って、明治初年の浅井忠の画室を外から見て(構えうちにあるの、初期の洋画家はああいう茶室風の画室に住んだのね、いかにも天心がああいう道服を着ていた時代らしい作りです。杉皮ばりだったりして、羽目が)ゆっくりして家へかえり、今日はよかったと話していたら、森長さんの電話で、わたしは眼光忽ち変ってしまいました。