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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
いい返事ね。大抵の気では暮しかねるあいさつね。
明日から二十七、二十八、と、こんどは一層根深いさわぎをしなくてはなりません。でも寿も焼けないうちピアノを持ち出せれば幸運だったことになります。三四日のところ、無事ですましてやりとうございます。これからの益※(二の字点、1-2-22)すさまじい時に、たった一人ああいうところにはなれていて、随分気のはることでしょう。食物のことなんかにしろカツカツ食べられるという程度だろうと云って居ります。釣り上りようが激しくてそういう予想を導くのでしょう。事実そうであろうと思われる全体の勢です。
きょうは火曜で、木曜とおっしゃったけれども、明日出かけてしまいそうです。くすりが欲しくて欲しくて。このかわきはどうしたのでしょう、外の光が午後四時で、余り緑と金とに溢れているせいでしょうか。そして、静かだからでしょうか。静けさの底にいのちの流れが感じられるほど、そんなにしずかな午後だからでしょうか。人気ない公園の樹蔭の白い像が、ひとりで生き出して、すきなひとのところへ歩きそうなのは、こういう緑と金との光に充実した午後の静寂の中でしょう、ありふれた詩人たちは、とかく月光に誘われてと申しますが。