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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

そして、現世紀の民族叙事詩は、極めて高度な散文でかかれつつあります。詩と散文の過去の区分は或意味では消失していると思ったのは、もう何年か前ですが、この秋に、わたしは散文というものの実質がどのように充実し高められ、生命そのものが粉飾的でない通りに、飾りない美に充ち得るかということを身をもって知って、一層切実にそう思います。散文をかく人間に生れ合わせたうれしさを感じます。文学的ということも、進歩いたしますね。ああいう小説がかきたいことね、沁々そう思います、不言実行的小説が、ね。

さて、これから、わたしは犬の仔の話をかくのをたのしみにして居たのに、電話が鳴って、ひとが来るのですって。仔が五匹チビから生れました。ある朝おきたら、外のカマドのわきの空箱の中に、さっき生れたというようなのが五つ入っていて、チビは大亢奮で、しきりに報告にとびつきました、一つは圧死していました。そこで、早速もっとひろくてふちの低い箱を見つけ出して、ワラをしきこんで、そっちを御新居にしてやって、死んだ仔を埋めました。犬の世話をしていると、こういう事業もわたしの仕事になって、それは苦痛です、閉口なの、全く。