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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
あっさりした気質のいい子です。
一昨年わたしがひっくるかえったときいたたけ、という女が、今熊谷在で産業組合の事務員をして居ります、それがきのう仲間三人もつれて来て、よっての話に、女の技術員になれとすすめられていますが、どうしましょう、というわけなの。農業技術員なのです、肥料配合や何かを指導する。女学校を出たりこういう程度の若い女が一ヵ月講習をうけて、技術員となり、農業指導が出来るものなのでしょうか。それほど、日本の農民は知らないことばっかりなのでしょうか。曰く、「肥料なんか今まで無駄にまいて居たんですね、今のだけでちゃんと出来て、増産して居りますもの」わたしが、集約農業の特徴を話したり質のことを話したりしていると、もうちゃんと聴いてはいなくて文鳥を眺めているのよ。所謂生活力と粗雑さ、粗雑なまま通ることからの自信にうたれました。
国府津の家が、ああいう役所になって留守番がいるということになり、急に、これ迄あなたのものをたのんでいた村田という洗濯やの父子をすすめて、そちらへ行きました。団子坂上の細い道へ曲った角の三角地帯にとりついた小さい家にカンバンもかけずやっていました。