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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

息子が若くて腕がよかったのが今年春死に、六月に女房も死んだのですって。すっかりつんぼの六十ほどの爺さんと十四の末息子がいて、いかにも気の毒だし整備で廃業し、何か転業したいというし思いついてあっちへ行けてようございました。この間雨の日、この祖父と孫ほどに見える父子が、さすがキチンとアイロンを当てた服を着、爺さんゲートル巻き下駄ばき、白い風呂敷包みを背負って(炊事用品)息子、カバンをかけ、小さい包み二つもって、つれ立って玄関に立っているのを見て、哀れを感じました。女房を失った老年、女親を失った少年、どっちも気の毒ですね。

その爺さんは大柄で、四角い顎をしていてわたしは奇妙に親しみを感じます。住心地がよくてありがたいと、きのう礼に来ました、安心しました。骨ぐみが、がっしりしていて、それはどこやら島田の父上のお体つきを思いおこさせるようでもあったりします。こころもちの近づきかたのモメントは微妙ね。「風と共に」に教えられたのでもないが。もう紙の表と裏に書かなくてはうそです、少くともペンでかける紙を使いたいと思うならば、ね、我まんしてよんで下さいまし。

〔欄外に〕