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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
四月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
四月十六日
ね、二人遊びは面白いでしょう、きょう一日あなたは私のするいろんな細々したことのお伴で、夜床に入らなければ放免にしてあげないという工夫です。
さて、さっき始めの封をしていたら、庭の方からカーキ色服の男の子が現れて、「魚やの配給です」「ああそう、どうもありがとう」「僕とって来ましょうか」「ありがとう。でもきょうは居りますから自分で行きます。」この男の子は裏の洋画家の長男です。父なる画伯は縁側に坐っていろいろの絵をかきます。その仕事ぶりは笑えないわ、そうやって描いて一家六人をやしなっているのです。
前のポストへ手紙を入れ、これを(十七日)けさ又受けとったのよ、七銭不足の由で。三銭四銭と恥しいほど長くはりつけることになりました。前かけかけたなり目白でやっていたようにカゴを下げて犬をつれて団子坂下を一寸むこうに突切った魚やへ行きました。魚やは初めてよ。三人で冷凍のタラ三切。三十銭也。となりの文具やへよったら封筒らしいものは一つもなし。坂を又のぼって下駄やへよったら隣組配給になるのですって。