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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
ほんとに何と少しばかりの本でしょう。ここでも感じますが、大きい自然の中では人間が押し出されたものが見たくて、たとえばセザンヌのような(人物)絵がほしいとお思いになるでしょう? 面白いことだと思います。
[自注16]村の司祭――バルザックの「村の司祭」。
七月十四日 〔網走刑務所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(湯島小学校六年 デジママサコ筆の絵はがき)〕
そこは三つ眺めとよむのね。きっと美しい三つの眺めのあるところなのでしょうね、そちらも地区によって名の系統に変化があるらしいようです。
体の痛いのと、ガタガタで、東京へゆくのもすこしおくれますが、大奮発をしてそちらまで辿りつきましょう。その上でのんびりすることにしてね。ここに風呂がないのよ。わたしは東京であれ丈疲れて来たから痛みがおこって来たのでしょう。近所の爺さまの家の渋湯に入って、大いに一がんばりいたします。
七月二十七日 〔網走刑務所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(封書 速達)〕
七月十四日
このところ、払暁から、紙やペンを、お見覚えのあの袋につめこんで空をにらむ日がつづきます。こちらは子供がいるし、全体としてぼんやり安全感があるせいか(うちのものは、よ。