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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
人間が、そんな風な危険に善処して、勉強もするだけして来ると、颯爽としたところが出来て、こころよいものですね。人は、その人なりの道によって、何か鍛えられる道を通ることが大切ね。そして、鍛えられるということを招く先ず第一の生活態度のまともさが大切ね。まともに生きない人には、天は決して人間鍛錬というような貴重な門を開きません。
年末に、おせいぼ、お年玉として書いて下すったお手紙。さっきお正月らしく元禄袖を胸の前にかき合わせて、もんぺの足どりも可愛ゆく門まで見に行きましたが、まだ来ていなかったわ。
この間の晩、一時間半おきには起されて、外へ出たとき、床に入っていてすぐ眠れず、うっとりしていて、昔の人の素朴さということを思いました。昔の人は、一筋のえにしの糸、と云いならわしました。そしてそれは紅色と思っていたのよ。だから妹背山のお三輪は采女の背に赤い糸を縫いとめて、それを辿って鹿の子の髪かけをふり乱しました。何となしほほ笑みます。えにしの糸が一筋なら、それはどんなに単純でしょう。一途というのも、とり乱しに高まるのが昔の情の姿だったのでしょうか。えにしの糸の色は無色透明よ、それはとりも直さずあらゆる天地の色をこめているということです。