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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
他人がいると、その人のこころもちを考え、こうしてここを守ることはとりも直さず自分を守ることにしてやらなければ、ね。その仕事したら手伝に来ていた荷作りの男が、自分のものも入れてくれ、ときのう荷車一台ひっぱって来て自分でしまってゆきました。
この地下室は因縁があって、英男という弟が高等学校上級の年この中でガスを発生させて死にました。昭和二年頃。国男たちはそれでここがこわいのよ。わたしは遠方にいて[自注5]、自分の目で見て居りませんから、その弟の善魂がそこに在るならあると思うし、おバケが出るなら火消しに出てくれると信じていますからそこを十分に活用する決心いたしました。そしてわたしはベッドを食堂へ持っておりて暮す予定にして居りましたが、目下のところ人員増加で、ここで一緒に食事しているし、すこしそれはあとになりましょう。ラジオがここにありますから、ここに臥る方がいいのよ、一々二階からおりて来るよりは。
きのう(十日)は一時間半ほどしか眠らないで体がくにゃくにゃだったけれども、御心配だといけないと思って大苦心をして、田端まで歩いて行きましたところそちらもお休みでした。