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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
03 一九三六年(昭和十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页
八年来の暑さだそうです。熱の工合はいかがですか。汗と盗汗との区別がおわかりになりますか? 食欲はあるでしょうか。今年の夏は久しぶりで私が家にいるから何とかしてすこしあなたも凌ぎよくしてあげたいと思っていたところ、休暇で工合わるくなり本当に残念です。
これは暑い、そう思い、そちらの様子を考えると暑さは又更に独特の汗を私にしぼらせます。この頃は暑さで夜中に目をさまし、又あまりよく眠れないくらいです。そちらではよくお眠れになりますか。少しは風通りはありますか。
うちの連中は暑さで閉口しながら元気で、太郎はこの頃小さい黒ん坊のように半裸で暮して居ります。大きい青桐の下に大タライを出してそこへゴムの魚や軍艦を浮べ、さかんに活躍です。スエ子の糖尿がいい塩梅にこの頃は少しましです。でもずっと注射して居ります。私はオリザニンの注射カムフルの注射で飽きあきしてスエ子の一日に二度の注射を傍目にも重荷のように眺めます。スエ子は目下職業をさがしています。
きのうは、繁治さん、栄さんや徳さんの奥さんなど皆で夕飯をたべました。徳さんもこの暑いのに可哀そうに[自注7]。
その前晩は、健坊[自注8]のところで珍しく夕飯をたべ、九時半頃になってそこらへ涼みに出ようと、これも栄さんを加え四人でぶらりと出たらどうも水の流れるのを見たくてたまら