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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

流動物ばかりです。私の位でも苦しいことは相当であったから、あなたはさぞお辛かったでしょう。歩くなどということは実に苦しい。どうかお大切に。私の方はいろいろ揃っているのですから。きょう板上執筆の試みとしてこれを書いて見ているのです。が、気を入れては少し無理かしらとも思う。何とかしてとにかく仕事だけはやります。どうか御安心下さい。全く今年は盲腸の当り年です。びっくりしてしまう。熱ははじめ八度出たきり。ずっと平熱です。

この間丸善で毛布の二枚つづきのをそれぞれ光井と島田とにお送りしておきました。達治さんも十一月三十日には除隊になったでしょうから、島田もさぞおよろこびでしょう。

あなたの冬用の厚ぼったいドテラが今縫いあがりました。フランネルじゅばんと入れます。どうかそのおつもりで、不用の袷類を下げてお置き下さい。

さむくなりましたが、今年は去年より概して暖いのではないかしら。きょうなどなかなかおだやかな日です。

盲腸など大変きらいです。少しひまなとき、そして健康状態のいいとき、切ってとってしまって置こうかと思います。こんなアナーキーな突発的な虫を体に入れておくことは何とも承知出来ない。