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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

(こんな色の紙は珍しいでしょう? たまには目に変っていいかと思って。)寿江子は線路のむこう側に新築されたアパートに部屋をかりて鵠沼を引上げました。夏で家賃が上るから。うちで夕飯をたべさせます。

太郎はナカナカなものになりました。遊びに来て玄関をガラリとあけると「アッコおばチャン」とアーッコに独得のアクセントをつけて呼ぶ。アーッコは大きいの意味です。いろいろしゃべります。寿江子は糖尿の消耗から或はすこし呼吸器を犯されているかもしれませんがまだ不明(但、寿江へのお手紙にこれを書いて下さらないように)今月のうちに調べると云っている。私は徹夜しないしどうか御安心下さい。今日は日曜でラジオその他が寧ろやかましい。

十五日 夕方。

六月五日づけのお手紙がけさつきました。このお手紙で見ると、私が五月下旬に書いた手紙はまだ見ていらっしゃらないのですね。お久さんが呉々も御親切にとよろこんで居ります。お久さんは三度たべます。私は二度だが。島田の方へは今日お母さんのお気に入りのハブ茶と中村屋の柔かい甘納豆とをお送りいたします。ハブ茶は野原の方へも。中村屋のザクスカはこの頃ちっとも食べず。