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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
もっとも前景の一かたまりの人間と、その奥の木を引っぱる一列の人間との間隔が、雰囲気的にアイマイにしか把握されていない、だからクシャとしている。実物は果していかがや。まだ見て居りません。十月最後に見られれば見ます。御体をお大事に。
九月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(鍋井克之筆「梅雨時の東郷湖」の絵はがき)〕
九月二十八日夜。
はじめの頃の単行本を、製本しなおしてお送りいたします。すっかり古くなってこわれてしまっているから。鎌倉へゆくと頼朝公御六歳のしゃりこうべというのがある。「一つの芽生」などというのを見ると、自分の御六歳のしゃりこうべのようで、フーフー。でもその小猿のしゃりこうべのようなものもお目にかけます。何卒幸に御笑殺下さい。
九月二十八日夜十二時。 〔宮本三郎筆「牛を牽く女」の絵はがき〕
大変おそく書いて、しかられそうであるけれど、今、きょうの分だけ仕事を終って比較的満足に行って、一寸あなたとお喋りがしたい心持。お茶を一緒にのみたいとき。原稿紙の上に、こまかい例の私の字でごしゃごしゃと(一)(二)という下に書きこんであって、そこから様々の情景と人々の生活が歴史の中に浮上って来る。