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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

何とたのしいでしょう。私は『あらくれ』や、『新女苑』や『婦公』に、新しい署名のものを送って、たっぷりして仕事している。

十月一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(国枝金三筆「松林」の絵はがき)〕

十月一日の夜。仕事が熱をもって進んでいる。雨だれの音。鶴さんが工合をわるくして心配しましたが、もうややよろしいらしい。あなたはいかがでしょうか。雨つづきで気分がさっぱりなさらないでしょう。

この仕事を五日の午までに終って、六日はお目にかかりにゆくのを御褒美のようにたのしみにして、せっせとやっている。ミシェルというフランス人がモンパルノという小説をかき、今大家であるモジリアニが一枚たった六フランでパン代に売った絵が一年後一万一千フランで売られたことなどかいていて、いろいろ考えさせます。

十月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 広島駅より(広島駅の絵はがき)〕

十月九日朝五時四十分。広島でののりかえ。このあたりでは構内のランプもすっかりくらくなっています。兵隊さんがこの食堂にも沢山。雨はやんでいます。七日の夜は仕事を片づけるために眠れなかったので、八日の三時に立ったときはフラフラ。